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仕事バカにならないために、年初に読みたい本『ネット・バカ』

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仕事バカにならないために、年初に読みたい本『ネット・バカ』

 

人間の特性が犠牲にされる

 80年代、世界の市場を席巻していた日本のエレクトロニクス企業がいま、疲弊している大きな原因は、日本企業のエンジニア教育にある。米国企業に”追いつけ追い越せ”の時代は、専門特化型のエンジニアでよかったが、いま求められているのは、哲学や芸術にも通じた深い洞察力を持つエンジニアだ。

そうしたエンジニアはどうしたら育つのか? 1つのヒントが、『ネット・バカ』(ニコラス・G・カー著、青土社)にある。3年前に刊行された本だが、今なおそこに述べられていることは、痛烈なメッセージをもっている。

著者・ニコラス・G・カーはMIT(マサチューセッツ工科大)のコンピュータ科学者であったジョセフ・ワイゼンバウグを人工知能の研究者として紹介している。そのワイゼンバウグは、人間がコンピュータと親密に関わるようになる際の大きな危険は、人間と機械を区別している人間の特性が犠牲にされることだ――という。この人間の特性とは、精神と身体とのつながり、記憶や思考を形成する経験、感情や共感の能力のことだ。

 

われわれはコンピュータを知り、人生の多くを「スクリーン上で点滅する体を持たないシンボルを通して経験する」ようになったが、これによって、「人間性を失ってしまう」と、ワイゼンバウグは危惧する。

この運命を回避するには、われわれの精神活動と知的追究における最も人間的な部分、「とりわけ知を必要とする作業をコンピュータにゆだねまいとする自覚と勇気を持つことだ」と著者はいう。

 

考えなしにあちこちクリックする

現在、スマホを含め、われわれの周りにはネットワークコンピューターがそれこそ、ユビキタス(どこにも存在するという意味)の状況にある。これが「われわれの感覚、認知、記憶をすぐれて拡張する強力な神経増幅器として機能している」と著者は述べる。

これまでデジタル技術の発展は人類にプラスをもたらすと信じられてきたが、本書『ネット・バカ』では人間の人間たる所以の部分を破壊すると、辛辣な意見を述べている。

2003年にオランダの臨床心理学者クリストフ・ファン・ニムヴァーゲンが行ったコンピュータ支援の実験を著者は紹介している。2つのグループにパズルを解かせる。Aグループには支援ソフトを与えたが、Bグループは何のヒントもガイダンスもない。

その結果は……。最初はAグループが早く正解を得た。しかし、実験が進むにつれ、Bグループの方が急速に熟達する。注目されるのは支援ソフトを与えられたAグループは「考えなしにあちこちクリックする」ことがしばしば見られたことだ。

 

瞑想的思考の勧め

ニムヴァーゲンによれば、問題解決などの認知作業をコンピュータに「外部化」すれば、われわれは新しい状況に適応する安定した知識構造――スキマーを脳が構築する能力を減じてしまうという。著者も「ソフトウェアが賢くなればユーザーはバカになる」と辛辣に述べている。

著者の考えにならえば、ググる――グーグルで検索して調べることで、私たちの脳は衰えていくということになる。つらい肉体作業を避けていると筋肉は確実に衰えることと同様だ。

著者の主張は明快だ。「紙媒体時代の研究者が雑誌や書籍のページをめくりながら拾い読みしていた”周縁的関連論文”の多くをオンライン時代の研究者は飛ばしてしまう」。

最後に著者はネットに対抗するために、私たちが行うべきものとして哲学者ハイデガーがいう静かな田園地帯での「瞑想的思考」を挙げている。

インターネットを使うすべての技術者が熟読すべき本だといえる。

参考: 『ネット・バカ』(ニコラス・G・カー著、青土社)

 

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